技術商業誌への寄稿は大変?寄稿した感想と執筆作業まとめ

活動報告

先日、技術評論社のSoftware Design 2020年12月号に寄稿させていただきました。技術商業誌への寄稿は今回が初めてです。
僕は『第1特集 Dockerアプリケーション開発実践ガイド』という4章構成の特集の第3章を担当しました。ページ数にすると8ページです。

技術商業誌への寄稿は以前から興味があり、技術雑誌を買うとよく「どういった人が執筆しているんだろう」と執筆者のことを調べていました。
今回は僕が執筆者の立場になったため、自分の体験談をもとに執筆開始から雑誌として発売されるまでの流れについて紹介をします。

以下のような疑問について答えていきます。

  • 商業誌ってどういった経緯で執筆依頼がくるの?
  • 執筆作業って具体的にどういったことをするの?
  • 商業誌への寄稿って儲かるの?

執筆依頼がきてから商業誌販売までの具体的な流れ

執筆作業は大きく分けると『原稿を完成させるフェーズ』と『原稿を元に作成された誌面を修正するフェーズ』の2つに分かれています。

予定されていたスケジュールおよび作業実績のまとめは以下の図の通りです。

脱稿とは原稿を書き終えることです。脱稿までに誤字脱字や文章の表現などを修正し、記事として公開しても問題ないレベルの原稿を完成させます。
つまり、執筆開始から脱稿予定日までの期間が『原稿を完成させるフェーズ』です。

入稿とは誌面を初めて印刷会社へ送ること、校了とは誌面の修正(校正)が終了した状態のことです。
入稿する前に誌面の修正作業を行うため、入稿時の誌面と校了時の誌面はほぼ同じものになります。
つまり、誌面(初校)到着から校了予定日までの期間が『原稿を元に作成された誌面を修正するフェーズ』ですが、実質の締め切り日は入稿予定日となります。

以下では、執筆依頼が来た時から雑誌として発売されるまでの実際の流れについて紹介します。

執筆依頼がきてから執筆作業に着手するまでの様子

執筆依頼はブログの問い合わせフォーム経由で届きました。
編集者いわく、Docker特集の執筆者を探していたところ、たまたま僕の書いたDockerの記事が目についたとこのことでした。

Dockerのデータを永続化!Data Volume(データボリューム)の理解から始める環境構築入門

2019年8月17日

ちなみに僕はDockerに関するブログ記事こそ書いていましたが、Dockerに関する登壇や出版経験のない、いちエンジニアです。

執筆依頼の連絡がきたのは9/2でした。雑誌の発売日は11/17だったので、発売日の約2ヵ月半前に執筆依頼がきたことになります。

執筆依頼では以下の内容について共有がありました。

執筆依頼で共有された内容
  • 担当ページ数
  • タイトルと見出し案
  • 締め切り日をはじめとした予定スケジュール
  • 原稿料はページ数に応じているということ
  • 原稿料には記事の二次使用への対価も含まれているということ

執筆を担当する分野だけでなく記事の見出し案も共有されるため、執筆作業はこの見出し案をベースに進めていくことになります。
原稿料は1文字単位ではなく、1ページ単位で計算されます。担当ページ数が決まっているため、執筆依頼がきた時点で最終的に受け取る原稿料がわかります。

原稿料や執筆期間、担当する記事の内容を確認し、問題がなければ執筆依頼の承諾をします。
承諾をすると『執筆依頼書』という書類がPDF形式で送られてきます。
執筆依頼書といっても印鑑を押したり違約金の説明があったりするようなものではなく、依頼内容や執筆に関する補足説明がまとめられた書類です。
執筆依頼書を確認後、原稿の執筆作業にうつります。

原稿を完成させるフェーズ

原稿を完成させるフェーズの期間は約1ヵ月で設定されていました。

原稿を書くツールや原稿の共有方法の指定はありませんでした。
使い慣れているものを使ってくれて問題ないとのことだったので、シンプルに『マークダウン形式で書いた原稿をGoogleドキュメントで共有する』という方法を採用しました。
記事に挿入する図を作成するツールも特に指定がなかったので、使い慣れているKyenoteを利用しました。

まずはキックオフミーティングを行い「記事にはどういったコンテンツを含めればよいのか」「どういった読者が対象なのか」などについて認識合わせをしました。

認識合わせを終わらせたあとは、執筆依頼の時に共有してもらった見出し案をベースに原稿を作成していきます。
執筆する過程で見出しの構成も見直したため、原稿の構成に問題がないか適宜編集者に確認をとりながら執筆作業を進めました。

編集者とやりとりをしながら原稿をひと通り完成させたあとは「ここの意味がわかりにくい」「ここの認識合わせをさせてもらいたい」など、文章に対するフィードバックが行われました。
今回は原稿作成にGoogleドキュメントを利用したので、Googleドキュメントのコメント機能でフィードバックをいただきました。

Googleドキュメントを利用した原稿作成の様子

脱稿までに提出した原稿の回数は合計4回でした。原稿提出のほか、細かなやりとりも脱稿までに何度か行いました。

原稿を元に作成された誌面を修正するフェーズ

原稿が完成すると編集部側で誌面の作成作業が行われます。
雑誌の発売日から逆算して誌面の作成作業が行われるため、原稿が早く完成したからといって誌面の作成作業が早まるわけでありません。

今回は予定より約1週間ほど前倒しで原稿を仕上げていたこともあり、原稿完成から誌面を修正する作業までは3週間ほど間が空きました。

誌面はPDF形式で共有されました。原稿を完成させるフェーズではGoogleドキュメントのコメント上でやりとりをしましたが、誌面を修正するフェーズではPDFのコメント上でやりとりをしました。

PDF誌面を利用した校正の様子

原稿が完了した時点で章の構成や文章の表現修正はある程度完成しているので、このフェーズでは原稿作成時に気がつかなかった細かな内容の修正を行います。

また、実際の誌面をベースに修正作業を行うため、現時点でどれだけのページを書いているかがわかります。
Webメディアへの寄稿とは異なり、紙媒体に寄稿する場合は担当ページ数が決まっているため文字数の制約がシビアです。
ですので、担当ページ数にするための文字数の調整作業もあわせて行いました。

『PDFのコメントに対して回答 → 編集部側で回答の内容を反映させた新しい誌面をPDF形式で作成』というような流れで修正作業が行われました。校了までに修正した誌面の回数は合計3回でした。

校了終了後、原稿料の振込先の指定や執筆者情報の登録を行いました。

商業誌に寄稿してみた感想

執筆依頼がきた当初「寄稿する元ネタはブログですでに書いているから、執筆はそこまで負担のかかる作業じゃないだろう」と思っていましたが、実際に執筆してみると想像以上に大変でした。

ブログ記事があるので書きたい内容や文章の構想はある程度決まっていました。
しかし、どの順序で説明するとわかりやすいか、誤った表現を使っていないか、文章のつなぎは適切か、など改めて考え直すことが多かったため思うようにペンが進まなかったです。
また、商業誌というお金を払って読まれる記事への寄稿だったため神経質になっていたのも執筆が捗らなかった要因かもしれません。

さらに、繰り返しにはなりますがWebメディアとは異なり、担当ページが明確に決まっている雑誌の寄稿は文字数の制約がシビアです。そのため、文章を書き終えても文字数の調整を行う作業が残っています。

今回の場合は『最終ページで許容されている空行は3行まで、文字数の少ない場合は原稿料が0.5ページ分減る』というルールが設定されていました。

執筆依頼時は『担当ページ数』と『1ページあたりの原稿料』しか聞かされていなかったため、0.5ページ単位で原稿料が変わることや、最終ページの字数数の制約については後から知らされました。トラブルの元になるかもしれないので、執筆依頼を引き受ける際は特に文字数のルールはきちんと確認しておくことをオススメします。

文章の内容だけでなく、(特に紙媒体への寄稿の場合は)文字数の調整もあるので修正作業は予想以上に多かったです。

なお原稿料についてですが、Webライターの1文字あたりの単価相場からすると商業誌への寄稿料は比較的高いほうだと思います。
しかし、得意不得意や慣れの問題があるので一概には言いきれませんが、商業誌への寄稿は割りにあう仕事かと言われると正直微妙かなと今回の経験を通じて思いました。
自分の場合は『仕事終わりの夜や土日祝日に執筆作業を行う』という生活を約1ヵ月間していました。

「じゃあ割りに合わないから執筆依頼は断るべきか?」と聞かれれば回答はNoです。

文章のプロである編集者から直接フィードバックをもらえるという貴重な経験ができますし、エンジニアとしてのプレゼンスの向上も期待できます。プレゼンスを高めることはお金以上の価値があると思います。
やはり「技術ブログやってます」よりも「技術商業誌に寄稿したことがあります」のほうが説得力があります。
ですので、特にエンジニアとしてのキャリアやプレゼンスが未熟な人こそ執筆依頼がきたら積極的にチャレンジしたほうがよいと思います。

執筆依頼は積極的に引き受けた方がよいと思いますが、ある程度時間を要する作業ですので、執筆の時間を割けるのか事前にきちんと確認することも忘れないでください。
特に締め切り直前はどうしても忙しくなりがちです。今回は早めに執筆作業を終わらせたつもりだったのですが、最終締め切り直前は短い頻度で何度も修正作業を行ました。

商業誌に寄稿してみた感想のまとめは以下のとおりです。

商業誌に寄稿してみた感想まとめ
  • 細かな調整などもあり執筆作業は大変なので、原稿料は割りに合わないかもしれない
  • 商業誌の執筆依頼を引き受ける場合は文字数の制約について事前に確認する
  • 商業誌への寄稿は大変な作業だけど、貴重な経験ができるのでチャレンジする価値はある
  • 余裕を持って作業をしても締め切り直前は忙しくなりがちなので時間の確保は大事

さいごに

以上で、商業誌の執筆依頼が来てから雑誌として販売されるまでの具体的な流れと、商業誌に寄稿をしてみた感想の紹介を終わります。

今回はたまたま編集者の目に止まった僕のブログが特集内容とマッチしていたため、執筆依頼が届いたと思っています。
ですので、いちエンジニアである僕が商業誌に寄稿できたのは偶然による要素が強かったかもしれません。

しかし「いつかは商業誌に寄稿してみたい」と思いながら技術ブログを書いていたので『技術ブログのアウトプットが商業誌への寄稿につながる』というロールモデルを曲がりなりにも示すことができ、個人的には満足しています。

また、偶然とはいえ技術ブログを書いていたからこそエンジニアとしての知名度がないにも関わらず商業誌に寄稿するというチャンスに巡り合えたので、アウトプットの大切さを実感しました。

ぼくの個人ブログは、はてブホットエントリーに一度ものったことがない弱小ブログです。
ブログに対する世間の反応がないと不安に思うことも時にはあったのですが、腐ることなく愚直にアウトプットを継続してきてよかったと思いました。

こんな自分でも寄稿をする機会をいただけたので、アウトプットを継続していれば寄稿に限らずさまざまなチャンスが誰にでもやってくると思います。

今回の体験が技術ブログを書かれている方や、いつか商業誌に寄稿してみたいと思っている方の参考になれば幸いです。

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